ORAL AND SYSTEMIC HEALTH

歯と健康

歯と口腔は、食べる、話す、呼吸する、表情をつくるといった日常生活に深く関わっています。むし歯や歯周病によって歯を失うと、噛む機能だけでなく、食事の選択、栄養摂取、会話、外出、人との交流などにも影響する場合があります。

また、口腔内には多数の細菌が存在し、歯ぐきや粘膜では免疫反応が起こっています。歯周病などによる慢性的な炎症、口腔内細菌の一時的な血流への侵入、糖尿病や喫煙などの共通する危険因子を通じて、口腔と全身の健康が関連する可能性が研究されています。

ただし、口腔内に問題があることと、全身疾患の直接的な原因であることは同じ意味ではありません。関連が示されている疾患、因果関係が検討されている疾患、科学的根拠が十分ではない主張を区別して理解する必要があります。

IMPORTANT

口腔と全身はつながっていますが、
すべての病気を歯だけで説明することはできません

口腔は身体から独立した器官ではありません。口腔内で起きている感染、炎症、出血、唾液量の低下、咀嚼機能の低下などは、栄養状態、血糖管理、呼吸器感染の危険性、生活の質などと関係する場合があります。

一方で、全身疾患の多くは、遺伝、年齢、生活習慣、感染、免疫、環境、社会的要因などが複雑に関係して発症します。口腔内の金属、失活歯、歯周病、根管治療歯などが存在するという理由だけで、全身症状の原因と断定することはできません。

研究で二つの状態に関連が認められた場合でも、一方が他方を直接引き起こしているとは限りません。喫煙、年齢、糖尿病、肥満、社会経済的状況、医療へのアクセスなど、両方に影響する共通因子が存在することがあります。

歯科治療では、確認できる口腔内の病変を適切に診断し、医科での診断や検査結果と照合しながら、口腔と全身の双方を管理することが重要です。

FOUR PERSPECTIVES

歯と健康を考える
4つの視点

口腔と全身の関係を理解するためには、一つの病気や一つの細菌だけを見るのではなく、複数の経路を分けて考える必要があります。

01

感染と炎症

むし歯、歯周病、根尖病変などでは、細菌感染と免疫反応が起こります。特に歯周病では、歯ぐきと歯を支える組織で慢性的な炎症が続く場合があります。

02

咀嚼と栄養摂取

歯の欠損や義歯の不調によって噛める食品が限られると、食事内容や栄養摂取へ影響する可能性があります。治療では噛む機能の回復も重要です。

03

全身疾患から口腔への影響

糖尿病、免疫機能の低下、自己免疫疾患、がん治療、服用薬などによって、歯周病、口腔乾燥、感染、粘膜症状が起こりやすくなる場合があります。

04

共通する危険因子

喫煙、食生活、睡眠、ストレス、加齢、肥満、医療へのアクセスなどは、口腔疾患と全身疾患の双方に影響する可能性があります。

THREE THEMES

歯と健康を考える
3つのテーマ

この親ページでは、歴史的な研究、統合医療を掲げる医療機関の考え方、現在研究されている口腔内細菌と全身疾患の関係を、それぞれ分けて紹介します。

01
WP
Weston A. Price

HISTORICAL RESEARCH

ウェストン・A・プライス博士

食生活、口腔状態、身体発育の関係を調査した20世紀前半の歯科医師です。その功績と、現代の科学的評価を分けて紹介します。


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02
PC
Paracelsus Clinic

BIOLOGICAL MEDICINE

スイスのパルセルサスクリニック

身体全体の状態と歯科治療を統合して考える「生物学的歯科」を掲げるスイスの医療機関です。標準医療との違いも含めて整理します。


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03
OB
Oral Bacteria

ORAL-SYSTEMIC CONNECTION

口腔内細菌と全身の病

歯周病菌をはじめとする口腔内細菌、炎症性物質、全身疾患との関係について、現在確認されていることと未確定なことを整理します。


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DETAILS

歴史的な考え方と
現在の科学的評価

過去の研究や特定の医療機関の考え方は、その時代背景や診療理念を理解する資料になります。ただし、現在の標準的な診断や治療の根拠とは区別する必要があります。

01
WP
Weston A. Price

HISTORICAL DENTAL RESEARCH

ウェストン・A・プライス博士の研究

ウェストン・A・プライス博士は、1870年に生まれ、米国で活動した歯科医師です。20世紀前半に複数の地域を訪れ、食生活、むし歯、歯列、顔面の発育、全身状態などを観察しました。

プライス博士は、伝統的な食生活を維持していた集団と、精製された砂糖や小麦粉などを多く摂取するようになった集団を比較し、食生活の変化とむし歯や歯列の変化との関連を記録しました。

食事とむし歯の関係、栄養状態と歯の形成の関係に注目したことは、歯科と栄養を考える歴史的な研究として知られています。一方で、対象集団の選択、調査方法、統計解析、交絡因子の調整などは、現在求められる臨床研究の基準とは異なります。

博士の観察だけを根拠として、特定の食事法がすべての病気を予防または治療すると結論づけることはできません。また、博士の名称を冠する団体が現在発信している主張のすべてが、博士自身の研究結果や現代の科学的合意を示すものでもありません。

現在の歯科医療では、むし歯の発症に、糖質の摂取頻度、口腔内細菌、唾液、フッ化物、歯の質、清掃状態などが複合的に関係すると考えます。栄養は重要な要素ですが、一つの食品や栄養素だけで口腔と全身の健康を説明することはできません。

※「ウェストン・A・プライス博士」子ページの正式URLは未確認です。子ページ作成後にリンクを設定します。

02
PC
Paracelsus Clinic

BIOLOGICAL MEDICINE AND DENTISTRY

スイスのパルセルサスクリニック

パルセルサスクリニックは、スイスで「生物学的医療」「統合的医療」などを掲げ、医科と歯科を組み合わせた診療を行う民間医療機関です。歯科部門では、口腔内の金属、歯周病、根管治療歯、顎骨、噛み合わせなどを、全身状態と関連づけて評価する考え方を採用しています。

口腔内だけを診るのではなく、栄養、生活習慣、慢性炎症、免疫、全身疾患などを含めて患者さまを診るという姿勢は、医科歯科連携や全人的医療と共通する部分があります。

一方で、「生物学的歯科」「デトックス」「病巣感染」などの用語は、使用する医療機関によって定義が異なります。検査方法や治療方法の中には、一般的な歯科診療ガイドラインで標準治療として確立されていないものも含まれます。

特に、症状のない根管治療歯や歯科金属を全身疾患の原因とみなし、一律に除去する治療には注意が必要です。歯を抜く処置や修復物を外す処置は元に戻せないため、画像診断、臨床症状、歯の保存可能性、代替治療の利益と危険性を確認する必要があります。

パルセルサスクリニックの考え方は、口腔と全身を一体として考える一つの診療理念として紹介しますが、その診断や治療をそのまま国内の標準的歯科治療として推奨するものではありません。

※「スイスのパルセルサスクリニック」子ページの正式URLは未確認です。子ページ作成後にリンクを設定します。

03
OB
Oral Bacteria

ORAL BACTERIA AND SYSTEMIC DISEASE

口腔内細菌と全身の病

健康な口腔内にも多数の細菌が存在します。細菌が存在すること自体が異常なのではなく、歯の表面、歯周ポケット、舌、粘膜、唾液などで複雑な細菌叢を形成しています。

歯周病では、歯周ポケット内の細菌と、それに対する免疫反応によって歯ぐきや歯槽骨の破壊が進みます。炎症を起こした歯周組織からは、細菌や細菌由来成分、炎症性物質などが血流へ入る可能性があります。

歯磨き、咀嚼、歯科処置などによっても、一時的に細菌が血流へ入ることがあります。多くの場合は免疫機能によって処理されますが、特定の心臓病や人工弁などを持つ方では、感染性心内膜炎への配慮が必要になる場合があります。

口腔内細菌と糖尿病、心血管疾患、誤嚥性肺炎、関節リウマチ、早産、認知症などとの関連が研究されています。ただし、疾患ごとに根拠の強さは異なり、関連が認められていても、歯科治療だけで発症を防げると断定することはできません。

比較的明確な関係が認められているものの一つが、糖尿病と歯周病です。糖尿病による高血糖や免疫機能の変化は歯周病を悪化させる可能性があり、歯周病の炎症も血糖管理へ影響する可能性があります。

高齢者や嚥下機能が低下している方では、唾液や食物とともに口腔内細菌を気道へ吸引することで、肺炎の危険性が高まる場合があります。口腔ケアは細菌量を減らすだけでなく、口腔機能や嚥下機能を維持する観点からも重要です。

※「口腔内細菌と全身の病」子ページの正式URLは未確認です。子ページ作成後にリンクを設定します。

LEVEL OF EVIDENCE

現在確認されていることと
慎重に考えるべきこと

臨床で確認できること

  • むし歯や歯周病は細菌と宿主反応が関係する疾患である
  • 歯周病では歯ぐきと歯槽骨の炎症や破壊が起こる
  • 糖尿病は歯周病の発症や進行へ影響する
  • 全身疾患や服用薬が口腔状態へ影響する場合がある
  • 咀嚼機能の低下が食事選択へ影響する場合がある

研究が続いている関係

  • 歯周病と心血管疾患との因果関係
  • 口腔内細菌と認知症との関係
  • 歯周病治療による全身疾患の予防効果
  • 根尖病変と特定の全身疾患との関係
  • 口腔細菌叢を変えることによる長期的効果

一律には断定できない主張

  • すべての慢性疾患は歯が原因である
  • 失活歯が存在すると必ず全身疾患が起こる
  • 歯科金属を除去すれば全身症状が治る
  • 特定の食事法だけでむし歯や病気を防げる
  • 口腔内細菌を完全に除去することが健康につながる

POSSIBLE PATHWAYS

口腔と全身が関係する
主な経路

口腔と全身の関係には、単一の経路だけではなく、感染、炎症、免疫、栄養、生活習慣など複数の経路が関係すると考えられています。

歯周病による炎症部位から細菌や細菌由来成分が血流へ入る可能性、炎症性物質が全身へ影響する可能性、糖尿病や喫煙などの共通因子が両方の疾患へ影響する可能性があります。

また、全身疾患や治療薬が唾液量、免疫機能、創傷治癒、口腔内細菌叢などを変化させ、口腔疾患を悪化させる場合もあります。口腔から全身への一方向だけではなく、双方向の関係を考える必要があります。

考えられる主な経路

  • 細菌の一時的な血流への侵入
  • 炎症性物質の全身への影響
  • 免疫反応の変化
  • 糖尿病との双方向の関係
  • 誤嚥による呼吸器への侵入
  • 咀嚼機能低下による食事の変化
  • 喫煙などの共通する危険因子
  • 服用薬や全身治療の口腔への影響

MEDICAL-DENTAL COLLABORATION

医科と歯科の
連携が重要です

全身疾患のある方では、歯科だけで判断せず、主治医から病状、検査値、使用薬、治療予定などの情報を確認する場合があります。

糖尿病、心臓病、骨粗しょう症、自己免疫疾患、がん、腎疾患などでは、感染リスク、出血、創傷治癒、使用できる薬、治療時期などに配慮が必要です。

歯科で全身疾患を診断することはできませんが、口腔乾燥、治りにくい炎症、異常な出血、粘膜病変などをきっかけに、医科受診を勧める場合があります。

反対に、医科で糖尿病や心血管疾患などの治療を受けている方が、歯科で歯周病や感染源の管理を受けることも重要です。必要な情報を共有し、双方の治療を安全に進めます。

ASSESSMENT FLOW

口腔と全身の関係を
確認する流れ

  1. STEP 01

    全身状態を確認

    既往歴、治療中の病気、服用薬、アレルギー、検査値、生活習慣などを確認します。

  2. STEP 02

    口腔内を診査

    むし歯、歯周病、根尖病変、粘膜、唾液、修復物、噛み合わせなどを確認します。

  3. STEP 03

    症状の経過を整理

    口腔症状と全身症状が始まった時期、歯科治療との時間的関係などを整理します。

  4. STEP 04

    必要に応じて医科と連携

    主治医へ病状や薬剤について照会し、必要な検査や診察を医科へ依頼します。

  5. STEP 05

    確認できる口腔疾患を治療

    原因が確認できるむし歯、歯周病、感染、修復物の不具合などを治療し、経過を確認します。

CONCLUSION

歯だけでも、身体だけでもなく
双方を確認することが重要です

口腔は食事、会話、呼吸、表情、社会生活に関わる身体の一部です。歯と口腔の健康を維持することは、痛みや歯の喪失を防ぐだけでなく、生活の質や栄養摂取を維持するためにも重要です。

歯周病と糖尿病のように双方向の関係が示されている疾患もあります。一方、心血管疾患、認知症、自己免疫疾患などとの関係については、関連が報告されていても、因果関係や歯科治療による予防効果が確定していないものがあります。

ウェストン・A・プライス博士の研究やパルセルサスクリニックの診療理念は、歯科と全身を考える歴史的・思想的な資料として紹介できますが、現在の標準的な診断や治療の根拠とは区別する必要があります。

原因が確認されていない全身症状を歯だけへ結びつけるのではなく、医科での診断を継続しながら、歯科では確認できる感染、炎症、咀嚼機能、修復物の問題などを適切に管理します。